平安時代の歌物語「伊勢物語」が小説としてよみがえったと
信濃毎日新聞に紹介されていました。
(高樹のぶ子著「小説 伊勢物語 業平」)
「伊勢物語」は能の世界でも多くの曲目の題材となっていて、
歌人 在原業平が、随所に登場します。
私の好きな「杜若」では
伊勢物語の「東下り」を題材にし、
夢幻の世界が繰り広げられています。
旅の僧が三河国で、
美しく咲く杜若を愛でていると、
里の女が、業平が「かきつばた」の五文字で
詠んだ歌の話をします。
唐衣
きつつなれにし
つましあれば
はるばるきぬる
旅をしぞ思う
女は、旅僧を自分の住まいに案内し、
美しく輝く唐衣と
透かし模様の入った冠を身に着けます。
これは、
歌に歌われた 高子の后の唐衣と
歌を詠んだ業平の形見の冠。
私は杜若の精です。
業平が歌舞の菩薩として現れ、
非情の草木も救ってくれたのです。
高子との道ならぬ恋に破れ
都を追われた業平
恋多き業平
業平の化身となった杜若の精が
美しく舞を舞いながら消えていく
幻想的な能です。
♪植え置きし。
昔の宿のかきつばた。
色ばかりこそ昔なりけれ。
色ばかりこそ昔なりけれ。
色ばかりこそ昔男の名を留めて。
花たちばなの匂いうつる
菖蒲の鬘の。
能「杜若」より
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