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執筆者の写真美千代  謡三昧。日々喜々。

能「経正」のシテを務めます~その弐 経正が愛した琵琶「青山」~


平経正は歌人としても知られていますが、琵琶の名手としても名高く、竹生島で秘曲を奉納したことで有名です。


その経正が愛した琵琶「青山」は、仁和寺門跡である守覚法親王より預けおかれた名器です。


「青山」は、平安の頃、遣唐使として唐に渡った藤原貞敏が、唐の琵琶の名人 廉承武(れんしょうぶ)から譲り受けた三面の琵琶(玄象、青山、獅子丸)の一つだと伝えられています。


なお、貞敏が唐からの帰る途中に海が荒れたため「獅子丸」は竜神に供するために海底に沈めたそうです。

その後海は静まり、日本には「玄象、青山」の二面が持ち帰られました。


献上された「青山」は、

代々皇族が法親王として管理する仁和寺に、帝から与えられていました。


幼少の頃より守覚法親王に仕えていた経正は、

「青山」を下賜され、この琵琶をこよなく愛していました。


しかし、平氏が都落ちをする際、

「青山」が戦の紛れの中で失われることを恐れた経正は、

仁和寺に立ち寄り、法親王に謁見して「青山」をお返しします。


「戻ることができたら再度賜りたい」との経正の言葉に、

この場にいた皆が、名残を惜しみ涙にくれたと「平家物語」にはあります。


この時に詠まれた経正の句

「呉竹のかけひの水はかはるとも なほすみあかぬ宮のうちかな」

(呉竹の筧を流れる水は移り変わりますが、水は今なお澄んで美しく、

この御所は私にとって飽きることのない住みかです)


能「経正」では、一ノ谷の合戦で討ち死にした経正が

幽霊となり仁和寺に現れます。

この句を口づさみながら。


経正の幽霊は、手向けられた「青山」を奏で、舞を舞います。

仁和寺に帰ってこれたことが、うれしくてたまらないように。


そんな経正の無邪気さと切なさが少しでも表せるとよいのですが。



因みに、この春留学を終え中国に帰国した青年が、

帰国前に琵琶を弾いてくれました。

当時の琵琶とは形が異なるようですが、その豊かな音に

青山と経正に想いを馳せることができました。。。。


彼は今もオンラインで謡と仕舞のお稽古を続けて下さっています。


中国と日本、千年以上の時の流れ

よい交流がつづくことを祈ります。




能「経正」は6月13日 16時より宝生能楽堂にて開演されます。

よかったらお運びください。

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